名古屋高等裁判所 昭和25年(う)1592号 判決 1950年11月29日
被告人
青木丈文又は美木徳蔵こと
美木良吉
主文
本件控訴を棄却する。
理由
弁護人武藤鹿三の控訴趣意第二点について。
原判決が所論判示第二の名古屋駅に着した下り列車内における被告人の窃盗犯罪事実の認定につき証人脇正蔵、伊藤秋雄に対する各尋問調書を証拠として挙示援用していることは所論の通りである。而して右各証人尋問調書によれば同人等の供述内容中には所論の各伝聞事項に亘る部分の存することも所論の通りであるが、原判決が右各証人尋問調書を援用したのはかかる伝聞証言部分を証拠にしたのではなく、その専務車掌として右盗難被害の申告を受けて採つた処置、又は鉄道公安員としてこれが犯罪の捜査開始、その捜査の経過状況、該捜査の結果被疑者として被告人を検挙した顛末等に関する事項についての供述部分を採証に供したのであることは、同判決が別に所論の証人佐藤愛子篠田忠次、松本喜一郎、松本たみに対する各尋問調書を同じく証拠に採用している趣旨からしておのずから明らかであるというべく、従て原判決が右証人脇正蔵、伊藤秋雄に対する各尋問調書を証拠として同人等の前記伝聞証言部分を採証に供した違法があるとの所論は全く当らない、故に論旨は理由がない。